2014年7月10日木曜日

急性期病院として取り組む在宅療養 沖縄県立中部病院

急性期病院である沖縄県立中部病院は、在宅医療にも取り組んでいます。在宅ケアの支援に向けて取り組みを始め、同志が集まり、看護師や薬剤師、ケースワーカーなど多くの協力も得てこの2年間で根付いてきたと高山義浩先生は語ります。動機は、入院している患者さんの医療依存を軽減し、住み慣れた自宅や施設での生活が実現するよう、急性期病院としてできることを果たしたいということでした。

退院後の療養に不安のある患者さんやご家族の相談に乗り、退院直後のフォローアップを病棟主治医と協力して行っています。そして、疾病や障害を抱えながらも生活が軌道に乗ったら、地域の診療所に紹介して、急性期病院の役割は終了となりますが、予後1カ月以内と考えられる悪性腫瘍の患者さんついては、沖縄県立中部病院で集中的な訪問診療活動を看取りの日まで行っています。







在宅療養に取り組み始めた当初は、まわりから訪問診療は非効率という見解の意見を多くもらいましたが、医師が病棟で毎日回診して、家族と面談し、ときに検査を行ったり、看護師が様々なケアを提供する急性期医療と比較すると、早めに在宅医療に切り替えた方が全体的な労力は抑制できるのです。在宅緩和ケアについても、訪問看護ステーションや介護事業所など地域との連携さえあれば、急性期病院の医師が自らやったとしても、診療時間は短縮します。また病棟のベッドも空くわけで、回転率が向上し効率的になるのです。

沖縄県立中部病院で1年間に在宅で看取った患者さんは合計で31名でした。その31名について分析すると、訪問診療を開始してから死亡するまでの期間は平均20.7日でした。その間の訪問回数は平均5.7回(うち緊急往診 1.9回)でした。沖縄県立中部病院では3人の医師でチームを作っていますので、医師1人あたりでは、1週間に2~3人を訪問診療し、1カ月に1~2回の緊急往診の対応になります。急性期病院の専門医として病棟や外来業務を続けつつも、少しの同僚のサポートさえあれば、1カ月に1人ぐらいの在宅死を支援することが可能になるわけです。

実際、病院では患者本人は家に帰りたいと強く望んでいる方が多く、「自宅に帰せるものなら帰してやりたい」という主治医や病棟看護師の強いニーズがあります。だから在宅療養に取り組むにあたり病院内では、根付かせるのに苦労はありませんでしたが、地域と呼吸をあわせるのに少し苦労がありました。たとえば、訪問看護師が医師へ夜間連絡することを躊躇したり、医師を待つことができず搬送してしまったり。これまで作られてきた地域の看取りのバランスがあるわけで、そこに勇み足で介入することなく、ゆっくりと溶け込むように浸透してきた我慢の2年間でもありました。

また高山義浩先生は、在宅の医療化を進めないよう、急性期病院として心がけるべき点は多々ありますが......。でも、日本は専門医/病院と一般医/診療所を明確に分けずにこれまで来ましたし、このあたりの心得は日本の病院医師に期待してよいと言っております。こうした柔軟さは、日本が選択した医師養成システムの良い面だと言っておられます。

これから病床機能報告制度の導入により、各都道府県で地域医療ビジョンを描き始めます。そのときに必要なのは、責任の所在を押し付け合うような役割分担では無く、地域住民の医療について地域の医療機関がチームになって取り組んでいくことでしょう。7割弱の病院が赤字経営と言われている中で、地域で連携していくということは、非常に役割分担が難しい部分を秘めています。ただ、これまでの枠組みに固執することなく、急性期病院でも在宅療養に携わる沖縄県立中部病院のような病院が、地域に貢献している病院であり、地域に必要とされている存続していくべき病院なのだと思います。







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